きっかけなんて、すっかり忘れてしまった。
こうなったきっかけも、喧嘩したきっかけも。
喧嘩なんてしてない時の方が少ないからいちいち覚えてられないというのが実際の所で、
今回も喧嘩に喧嘩を重ねてそもそも何に対して怒っていたのか忘れてしまった。馬鹿らしい。
というか、何故俺はこんな所に立って奴を待っているんだ。


今回の刹那の任務はそんなに難しいものでは無く、怪我さえもしないだろうと思っていた。
けれど、任務が終わったと聞いてホッとして、その事に驚いた。
自分はいつだって、彼を失う事を恐れているのだ。


「…くそ」
…エクシアの任務が終わったと聞いてから3分。整備を手伝っていなければそろそろ来ても良いはずだ。
悔しい。どうして俺が謝らなければいけないんだ。あいつは、俺が居なくなる事が恐ろしくないのか。
聞いた所で返ってくるのは沈黙か、そっけない言葉なのだろうけれど。


ふと気配を感じて横を見やると、角を曲がってこちらに来る刹那が見えた。
と、思うとこちらをちらりとも見ずに部屋の中へと入っていった。


そうか、お前は俺が謝らなくても良いんだな。このままずっと目も合わさず言葉を交わさないままでも。


「…刹那、」


…死ね。