たまらなくなって腕を伸ばして掻き抱いた。 抵抗しない身体はまるでそこにあるのが当たり前だとでも言うようにすっぽりと埋まった。 身体がじんじんと痛い。胸の奥もぎゅうっとしまって息が出来ないんじゃないかと思う。 でもこれがきっと、彼が味わった苦しみなのだ。 ------ どうしてまた会うことになったのか、ミハエルにはよくわからなかった。 確か数日前、独り言のようにぼそっと「あいつに会いたいなぁ」と言えば、 突然地球に降ろされ「ここへ行け」と場所を指定された。 ヨハンがどうして奴らの潜伏先を知っていたのか、それは定かではない。 とにかく、ミハエルは彼らと三度目の対面を果たすことになったのである。 突然訪れたミハエルを見て、彼らが驚き怪しんだのは言うまでもない。 けれどミハエルにしてみれば、ただ会いにきただけなのだ。彼に。 怪しまれたところでなにも出てきやしない、とにかく奴に会わせろと言って部屋に通してもらった。 あのシャワー室の一件から2週間が過ぎていた。 会って何をしようとしていたわけではない。 この間のことはすまなかったなどと、言うはずもない。 一体自分は奴に会って何をしようとしているのだと彼の個室に案内されながら考えていたが、 部屋のドアが開いて彼の顔を見た瞬間に理解した。 ー俺はこいつが欲しいんだ。 思うやいなや、ドアを閉めると前と同じように乱暴に唇を重ねた。 「…っ何をする!」 やはり前と同じようにはいかなかったか。 少し残念だと思いながらもミハエルはどこか自信に満ち溢れていた。 「いいじゃんもう一回くらい。こないだのこと、バラされたら困るのはそっちじゃねぇの?」 「……こないだのこと?」 「シャワー室の話。忘れた?訳ねぇよなぁ」 けらけらと笑うミハエルを見て、ティエリアは眉間の皺をいっそう深くしたかのように見えた。 が、それは一瞬。 口元に嫌な笑みを浮かべて、言った。 「−よかろう。ただし、前と同じようにいくとは思うな」 その言葉の意味をミハエルが理解したのはほんの数十秒後のこと。 ベッドにつれて行かれたと思ったらいきなり押し倒された。 え、と言うまもなく唇が重ねられる。 これって、騎乗位希望とかそんなんじゃないよな、と気づいた途端青くなった。 ーまさか。 「おい、よせ!」 「なんだ?言い出したのはそっちだろう」 「そうだ…けど、そっちじゃねぇ!」 「聞こえないな」 「おい、おい、まじで待て…って、」 いつの間にか服をたくし上げられていて、乳首に歯を立てられた。 痛いような、くすぐったいような、微妙な感じだ。 何とか起き上がろうとしたがうまくいかない。 くそ。重力とはこんなにも面倒くさいものだったか。 やめろという自分の声も聞かず(でも確かにこの間の自分もそんな声は聞かなかった) ティエリアは口を下へ下へと持って行く。 ズボンを下着ごとずり下ろされた時、ティエリアは嘲るように笑った。 「勃ってるじゃないか」 「うるせっ…ちょ、もうこれ以上やめ、うッ」 手でおもいっきりしごかれた。 こいつほんとにそういう商売してたんじゃねぇの、と思うくらいその手さばきは巧妙だ。 あっという間にイッてしまう。 「…早すぎる」 「てめ…ぶっ殺す…」 「どの口が。同じ事をしておいてよく言えるな。まだまだ、だぞ」 「はぁ?…いッ…!いてぇ!なんだこれ…!」 今まで感じたこともない痛みに涙が出た。 なんだこれ、なんて言わなくても分かる。 後ろに回された指が入っているのだ。 なんて圧迫感。こんなものが、快感に繋がるわけがない。 「ティエリアっ…はやく、抜いてくれ、」 「駄目だ。まだ一本しか入ってない」 「無理、無理だってこんな…ッ!おい…!」 「…」 「ティエリア…!悪かった、俺が悪かった、から、」 「…ふん、」 拗ねたように鼻を鳴らしたかと思うと、急に下腹部の違和感がなくなった。 あれ、とティエリアを見ると、彼はあっさりとミハエルから離れ、ベッドの際に腰を下ろしている。 「…ティエリア?」 「お前は、ろくでもない奴だ」 「あぁ…」 全くそのとおりだ。 好き勝手しておいて、彼の気持ちなど考えたこともなかった。 「…痛かったか、」 ティエリアがこちらを見て聞く。 「…あぁ」 「すまなかった」 素直に謝られて驚く。 元を辿れば謝るのはこっちじゃないのか。 「俺も…悪かった」 改めて謝ると、ティエリアはふ、と笑った。 あぁ、やはり、笑った顔も綺麗だ。 「俺のことは良い。…平気だから」 手を洗ってくる、と言って立ち上がった、その彼の腕を引き寄せた。 少し乱暴だったかもしれない。けれど別に少しくらいは構わないだろう。 ーだって、本当にたまらない気持ちになった。 自分の腕に収まった細い身体。 何かを伝えようとしたけれど、何を伝えて良いのかわからなかった。 電子音が鳴る。 きっと、ヨハンからだろう。…もう、帰らないといけない。 また来てもいいかと尋ねると、ティエリアは構わないと言って、ミハエルの背を強く抱いた。
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