ティエリアの部屋の前に立つと、鍵の掛けられていないドアがあっさりと開いた。 意外だと驚きながら先に進むと、水の流れる音。シャワーを浴びているらしい。 「…おいおい、どんだけ無防備なんだよ」 部屋に鍵も掛けずシャワーを浴びる。 きっと鍵を掛けなくとも誰も勝手に入ってこないのだろう。仲間との接触すら避けている様子だったし。 目の前にあるシャワー室へのドアの前でミハエルは首を捻った。 「…どうすっかな」 予定では部屋の鍵は閉まっていて、呼び出しを押し続けドアが開いた所に滑り込んで口を吸うつもりだった。 殴られるであろうことは承知の上だ。 ただ、あの女みたいな男の唇がどんな感触なのか、物凄く気になるだけ。 出てくるまで待つか。いや、じれったい。どうせすぐ済むんだ。 相手をまるで無視した考えに決着をつけたミハエルは、躊躇うことなく目の前のドアを開いた。 「誰だ」 ドアを開けて、その先にあるカーテンに触れた所で向こうから声が聞こえた。 ドアを開ける音で気づかれたらしい。 でもまぁいいか、とカーテンを開くと、肩越しに振り返ったその男が居た。 「おれおれ。ミハエル・トリニティだよん」 「何をしている」 「君に会いに来たんだよ、ティエリア・アーデくん」 訳がわからないといった表情だ。 きゅ、とバルブを捻って湯を止めると、「出ていけ」と凄まれた。 そんな綺麗な顔で言われても怖くないんですけど。 言うことを聞く変わりに、ミハエルはこちらを向いたティエリアのまっ平らな胸と、その下にあるものをまじまじと見て呟いた。 「やっぱり男なんだよなぁ…」 カッと目の前の人物の顔が怒りで赤くなる。 「出ていけ。これ以上ここに居ると、撃つ」 「何で撃ってくれんの?ひょっとしてこれ?」 カーテンの手前に脱いだ服と共に置いてあった銃を見せると、彼の目が見開かれた。 しまった、と顔に書いてある。 いつもなら万が一の時の為に持って入ってるのだろう。 今日は運が良い、とミハエルは笑みを浮かべた。 と、そこで本来の目的を思い出す。 「そうだ、すぐ済むからさ、ちょっと口貸してくんない」 「は?何言っ…んんっ」 返事は聞かずに腰を引き寄せて乱暴に唇を重ねた。 なるほど、やはり感触は女と変わらない。 ティエリアはミハエルから逃れようともがくが、力で勝てるわけがなかった。 「…ん、」 『すぐ済む』はずだったキスは何故かいつまでも続き、やがてティエリアから鼻にかかった声が漏れた。 キスだけで感じてるって、俺巧いんじゃねぇの、とミハエルは内心ほくそ笑んだが、 むしろこの時流されそうになっていたのはミハエルの方だった。 歯列を割って舌を割り込ませ、彼のそれに触れた時、ミハエルは何かがぱちんとはじけたのが判った。 (まずい) ーこいつを抱きたい。 そう思うともう歯止めは聞かず、口を離すと彼を壁に押し付け身体を反転させる。 後ろから抱え込むと、ティエリアのそれを片手で掴んだ。 「ゃ、やめろっ…!」 乱暴にこすりあげると、彼はあっという間に大きくなった。 さてどうしようか、とミハエルはまた首を捻る。 ここで彼をイかせる事は恐らく簡単だろうが、勿論自分も気持ちよくなりたい。ストレートに言えば、入れてみたい。 だが、当たり前だが男のそこはそんな物を受け入れるようにはなっていないし、 試しに彼を触っていた手を後ろに持っていっても、そこは硬く、とてもじゃないがそんなことは出来そうにない。 どうしたら良いのかよくわからないまま、女にするように胸の突起を弄ってみる。 「…ん、ぁ…っ」 彼が小さく声をあげた。 ふと、ある仮定に思い当たる。 「お前…男初めてじゃねぇだろ」 ー沈黙は肯定の証拠。 あぁなんだそういうことか。 よくわからない納得をした。 そして片方は胸を弄ったまま、もう片方の手の人差し指をゆっくり入れてみた。 「ぁ、はっ…あぁぁッ」 やっぱり。 女と同じように、胸を弄れば後ろも徐々に柔らかくなっていく。 ーおもしれぇ。 2本入れた指を引き抜き、いよいよ、と己をあてがった。 「ゃ、嫌ぁぁっっ!!」 本能的に逃げる腰を引き寄せる。 片方の手で前を触ってやると、彼は両方からの快楽に我慢できない様子だった。 顔は見えないがきっと屈辱にゆがんでいることだろう。 けれどミハエルは判った。ティエリアは男に慣れている。 そうでなければ、きっとここまで簡単に男を受け入れられないだろう。 そしてその中は今までミハエルが味わったどれとも比べ物にならないほどだった。 締め付けられる感じがたまらなく、イイ。 「…どうだ?ティエリア…」 「離せっ…はな、せ…!」 「冗談。離さないのそっちだぜ?意外と淫乱なんだな…」 「ふ、ざけ…あ、あッ!」 「…やべぇ、イきそう、」 「ゃめ…ゃ、あぁぁぁッ!!」 「おい、立てねぇのか?」 中から出た後、そのままずるずると床のタイルに座り込んだティエリアにミハエルが声を掛けた。 ティエリアはうるさい、よるな、消えろ、とかそんなような事を肩で息をしながら言った。 顔が見えないのが勿体無いと思いつつも素直に従い、シャワー室を出る。 「タオル借りてくぜ」 自分のやら彼のやらで服がべっとりと濡れてしまった。 兄妹たちになんて言い訳をしようかと考えながら、ミハエルは満足して、その余韻にしばらく浸っていた。
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