最初見たとき女なんじゃないかと思った。

さらりとした髪も、綺麗な瞳も細い腕も、

女だと思うには十分すぎるほどだった。

だから声を聞いてなんだ男なのか、とがっくりしたのだ。

彼を助けに行ったのが自分だったら、変に期待して落胆することもなかったのに、と

ミハエルはため息をついた。

プトレマイオスに乗っているガンダムマイスターたちとの接触を終え、

今また自分たちの母艦に戻ってきた所だ。

指示をだす兄ヨハンを見ながら、ミハエルは心の中でううん、とうなる。

今までミハエルにとって、一番かっこいいのはヨハンで、一番可愛いのはネーナだった。

身内を第三者の立場から見ることは難しいが、

兄貴は結構整った顔をしていると思う。ネーナは文句なしに可愛い。

しかし、綺麗なものの対象というのは存在しなかった。

(女だったら良かったのにな)

今日何度目かわからない事を思う。

そして、もし女だったら自分はどうしてたろう、と。

もしかしたら、ネーナと同じ行動をしていたかもしれない。

きつそうな性格だから初めは拒まれるだろう。

けれど、しつこく迫って行けば、いずれこちらになびくに違いない。

と、そこまで考えてミハエルはいやいやと頭を振る。

何考えてんだ、相手は男じゃないか。

(−いや、でも)

キスの一つや二つくらいなら、本当にしてみてもいいかもしれない。

男とキスしたことはないが、唇の感触なんて男も女もそう違わないだろう。

不意打ちで食らわせたら、どんな顔をするのか。

そう思うとどこか楽しい気分になってきて、ミハエルはにんまりと微笑んだ。