げに美しきは棘ある花かな。








ジャ ラン、と金属が擦れる大きな音がしたと同時に視界を何かがかすめた。
首に巻き付こうとするそれを苦もなく掴み、振り向きざまに強く引 く。
「!っ、」
「…目が覚めたようだな」
淡く笑って寝台に横たわる人物を見下ろせば、苛烈 な瞳に出迎えられた。
ぐい、と手にした物を引き付けると細い身体はベットサイドに立つ私の方にずり寄った。
「くっ、 放せ!」
掌に痛い程に冷たい鎖はスボンの裾から覗く細い足首に繋がっている。
この部屋全体と、隣接するトイレま では自由に行き来できる長さが有るそれは、見た目の繊細さとは裏腹に非常に丈夫で壊れにくく、家主の静脈認証が無い限り外されることはない。


「君 が先に仕掛けてきたんだろう」
行為が終わった後、眠りにつく彼を抱えて二人分の汚れを洗い流した。(初めて彼を抱いた夜は私と彼の二 回分シャワーを浴びる羽目に陥った。)それでも目覚めることがない彼に服を着せ、ベットに下ろしたのだ。
私が思うに、この子の体は感 度が良すぎる。快楽の大きな波に耐え切れずに流され、最後には意識を手放してしまう。
…私が一度に多くを求めすぎているせいでも有る だろうが。


「意識を取り戻した途端にこれかい?」
飛んで来た物は正確 にこちらの首を狙っていた。あと少し反射神経の鈍い者なら今頃は息をしていないだろう。流石はソレスタルビーイング。情事の後とて機会は逃さない。暗殺業 を営むことも可能だろう。
「それだけのことを、あんたはしてるだろう」
殺されても文句は吐けまい、と眼差しを揺 るがせもせずに言う声は少しかすれている。シャワーを浴びた髪は渇ききらず煌めき、布の下に隠された薄い胸にはくちづけた痕が無数に残っているはずだ。



あ まりのつれなさに少しからかってみたくなった。
「先程まであんなに可愛らしく鳴いていたのに」
「黙れっ!」
悲 しい顔を装ってふざけると即座に厳しい言葉が飛んで来た。頬に朱が昇ったそんな顔で睨まれても全くこたえ無いのだが。
むしろ…
「そ れとも、足り無かった?」
「何っ、」
…そそられる。
「ずいぶんと、積極的だ」私が鎖を持っ たままなので、枷が付いた彼の右足は強制的に高々と上げる形になっている。
爪先から腰の辺りまでの流れる曲線を、嘗めるように目でた どった。
「もう満足したと思ったのだが…」
身の危険を感じた彼が慌てて足を閉じる前にその隙間へ身体を滑り込ま せ、上体を起こした彼に覆いかぶさる。
ベットのスプリングと彼が抗議の声を上げたがどちらも黙殺した。
ひきつっ た顔の彼へ笑いかけながら、





「で は、第2ラウンドといこうか」