夢見し花は花瓶の中。





シャ ワーを浴びて戻ってきても、彼は寝たままだった。
寝息があまりに静かなので思わず呼吸を確かめてしまった。
(こ の程度で死ぬようならばガンダムには乗れぬな。)
自分の無駄な行動を笑いつつかざした手を下ろし、眠る子供を見つめる。
殺 意を込めて何度も睨んできた琥珀の瞳は今はまぶたの裏に隠されている。
濃いまつげは扇形に広がりそこに溜まっているは涙。泣いたせい で目尻が朱いのがなんとも艶っぽい。
両手首に残る縛られた痕は、もがいたためにきつく閉まり酷い状態だ。
(後で 治療しておこう。感染症になんてかかられたら面倒だ。)
微かに上下する胸にちりばめた赤や、横たわる体に絡み付く白い液体が昨夜何が 有ったかを物語っていた。




…彼の体は真っ白 だった。 
この容姿で今まで誰の手も付いていなかったのは奇跡的だ。
周りの人間が性欲処理に苦労したことがな かったのか、彼を庇護する存在が居たのか。はたまたその両方か。
おかげで愉しい思いをさせてもらった。
私があの 顔を見た最初の人間かと思うと、笑いが込み上げてくる。
それほどまでに、彼の絶頂の顔は…よかった。
一度で終わ らせておこう。そんな気遣いはすっかり忘れていた。
嬌声の合間に私を罵倒する声や、拘束を解こうと必死になる姿、涙に濡れながらも睨 むのを止めない眼差しが相手を煽るだけであることを知らないのだ。この子は。
拒絶される程に高まる欲求を、幼い体へ押し付けた。初め ての経験は彼の体力をねこそぎ奪い取り、それを回復すべく、夢の世界にいる。





(さ て、これからどうしようか。)
軍に引き渡す、という選択肢はとっくの昔に捨てていた。諜報部隊の手で廃人になるまで拷問と自白剤を使 われた姿は見たくない。彼の鋭い眼光が失われるなんて。
…そんなのつまらない。
(やはり、ここに置いておく、 か。)
あぁ…その方が何百倍も面白そうだ。
私自らが彼を言葉と体で攻め立てる日々は、とても、とても楽しいだろ う。





自分の運命が無情にも 決定された子供は、それから逃れるように深い眠りから覚めない。
うっすらと開いている柔らかな唇にくちづけても未だに安眠を貧る。
「今 は、寝させてあげよう」
汗にしっとりとしている黒髪を飽きることなく撫でる人物が浮かべる笑みは







慈 悲などかけらも無かった。