「刹那、結婚してくれ」 …ぢゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。 唐突に放たれた言葉に返されたのはどこか間の抜けた音だった。 「…もう無いのではないか?」 いつまでも続くそれに思わず意見を述べるグラハム。 きゅぽん、とちいさく鳴らしつつ刹那の唇がやっとストローから離れる。 「無くなった、」 「おいしかったかい?いちごみるく」 パッと見には全く変化が見当たらない刹那の表情だが、そこはそれ、愛の力でグラハムは小さな恋人の微かに物足りげな目元の変化を読み取った。 「また買いに行こう。それとも、今度はバナナ・オ・レにしようか?」 「ばななおーれ?」 確実にひらがな表記の発音だった。 グラハムは大きな瞳に書いてある疑問の色を可愛く思う。 「いちごみるくのバナナバージョン、と言ったところか」 まだ見ぬ美味しそうな物への期待で少年の瞳の星が3個ほど増えた。 愛しくてしょうがない。グラハムの顔がだらしなく緩んだ。 「きっと美味しいよ」 こくこく頷く姿のなんと愛らしいことか。 こんなにも可愛らしい存在にはぜひとも幸せになって欲しい。否、なるべきだ。だから… 「刹那、結婚してくれ」 恋人の可愛い反応でうやむやになってしまった台詞を再び繰り返す。 「どうしたんだ、いきなり…」 驚きと共に数度瞬きをしつつ上目づかいで見上げてきた。 そんなに連発しないでくれ、身がもたない。 とゆうか、まさか他の者にもそんな反応を返しているわけではないだろうな。 …だめだ、危険すぎる! 「結婚しよう!!」 籍を入れてしまえば敵もあきらめるだろう。刹那は私のものだ! グラハムは居るかどうかも分からない恋敵を駆逐すべく、本格的に口説き始めた。 「ジューンブライド、とゆう言葉を知っているかい?」 バナナ・オ・レを知らないのだから当然知るわけがない刹那がふるふると首を振った。 「6月に結婚した花嫁は幸せになれる、とゆう一種のジンクスのようなものだ。私は刹那に幸せになって欲しい。幸せにしたい。いや、必ず幸せにする。一生大事にする。だから6月に結婚しよう。6月はあと数日だ。したがって、今すぐ結婚しよう!」 様々な部分に無理が有るグラハムの論理につっこむわけでも熱烈なプロポーズの返事をするわけでも無く、刹那は 「…6月でなければ幸せにはなれないのか?」 お子様的思考回路で質問した。 「い や、他の月でも問題は…はっ!!!………そうか…そうではないか…ジンクスに頼る必要性など私たちの甘い未来には全くもって皆無ではないかっ。幸せにす る。してみせる。幸せになろう!例え、緑が生き生きとした夏であろうと、紅葉が美しい秋であろうと、雪原が眩しい冬であろうと、うららかな春であろうとそ れは不変の真理ではないかっ!!刹那、私は目が覚めたような気分だ。やはり君はすばらしい、私の運命の人だ!」 グラハムのテンションはさながら、手から離れた風船のように上がりっぱなしで、大気圏に突入しそうだ。 そのままの勢いでがばちょ、と抱きつかれながら、 ケッコンって何だったかな、 そう、刹那は思った。 *流石の刹那でも結婚が何であるかは知ってると思います。オチがこれしか思い付きませんでした…
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