丑三つ時
なるべく音をたてないように慎重にドアを閉めた。ただいま、と言う声も押さえ気味だ。
時刻はすでに夜中の2時。刹那の就寝時刻はとっくに過ぎている。彼の睡眠時間は長い。まだまだ子供だから。
よく寝ることは良いことだ。
話の途中で寝てしまった、と謝る彼に言ったら
『でも、俺は、もっと話したかった』
と拗ねられたっけ。
刹那の可愛い顔を思い出し微笑みながらリビングに入ると、意外にも電気が点いていた。テレビもつけっぱなしだ。
そして
刹那がいた。
毛布に包まって、ソファーの上で丸くなっている。
いったいなぜ、こんな所で?
「…刹那、風邪ひくよ」
もう少し寝顔を眺めてみたい気もしたが、それより彼の体の方が心配だ。
そっと声をかけると、眠そうにこちらを見上げながら「…おかえり、グラハム」と柔らかく微笑した。
寝ぼけてるせいか、いつもより無防備だ。
…やっぱり刹那は可愛い…改めて認識しながら
「ただいま、刹那」
と返した。
こんな何気ない会話を二人でできることが
幸せだ。
目元を擦りつつ起きた刹那に
「どうして、こんな所で寝てたんだ?」
気になったことを尋ねてみると
彼は頬を少し赤くして顔を伏せた。
「…なんでも、ない。別に…」
「そんな顔されたらもっと気になるじゃないか」
「?」
そんな顔ってどんな顔だ?と言いたげな無自覚な刹那を抱き寄せて囁く。
「教えてくれ」
刹那は、困ったようにこちらをちらっと見てから、
「……ベットが、広くて」とつぶやいた。
「…ん?」
「…最近は、あんたが一緒だったから…違和感があって」
だから、寝れなかった。と
やばい。
理性が飛ぶ。
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