黄昏時
ただいま、と玄関を開けても家は沈黙を返すだけだった。
「…そうか、今日から仕事か…」
つぶやきながら入ったリビングは朱に染まっていた。
調度、正面に有る大きな窓から夕日が差し込んでいる。
なぜか
あぁ、今、自分は一人なのだ
と強く実感した。
付き合い初めてしばらくたった頃に
『君の瞳の色は夕日と同じだ』
と言われた。
先一昨日は二人で話をしていて、気付いたら暗くなっていた。
一昨日は朱色の中、この部屋で抱き合ってキスをした。
昨日は一緒に、並んで料理をした。
この時間、彼の金髪はきらきら。いつもよりもオレンジが強くなる。白い肌は燃えてるみたいに赤。
優しい目。柔らかい口調。力強い腕。
温かい。
俺には無いものをいっぱい持ってる。
彼は、太陽みたいだ。
一緒に居ると安心できて、嬉しくて、しあわせ。
けど
今は一人。
夕日の色はこんなに寂しいものだったかな。
伸びる影が一つであることが、こんなに悲しいなんて。
ねぇ。
今あなたは何をしてる。
グラハム。
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