朝だ。

目を開けると至近距離に刹那の可愛い寝顔が有った。

昨夜はあのまま何度彼を絶頂に導いたか覚えていない。

最初は刹那に私の存在を知らしめるつもりだったのだが、徐々に、私自身が彼の存在を確かめたくなって…自分を押さえられなかった。

刹那の事になると、私は余裕が無くなる。

彼の前に付き合っていた人達が「誰かとキスしてた」なんて聞いても、さっさと別れるだけだっただろう。なのに

この小さくて細くて可愛い恋人が離れてしまうかもしれないなんて、私の他に好きな人ができたかもしれないなんて、

許せなかった。

離したくなかった。

…気付くと彼を押し倒していた。

だいぶ前から気付いてはいたのだ。

自分は

刹那に溺れている。



自己分析をしていたら、腕の中の刹那が目を開けた。「…おはよう。刹那」

彼はまだ眠そうだ。ぼぅっとした目。

「水、飲むかい」

うなずいた刹那にベットサイドに最近常備し始めたミネラルウォーターを手渡した。

多分、今の彼は声を出せる状態ではないのだろうが、聞かずにはいられなかった。

水分を取り終わった刹那に言った。

「…どうして、キスしたんだ」

少しの空白の後、刹那は泣きそうな顔で口元を擦り始めた。

ごしごし。ごしごし。ごしごし。

何度も何度も。

…あぁ、この子は…

その姿を見て分かった。

きっと、不意打ちとか、無理矢理とかで。刹那の意志ではなかったのだ。そして、一人で落ち込んでいたのだ。

誰にも言えずに。

…なんて、可愛いんだ…

堪らなくなって刹那を抱きしめた。

「ごめん。刹那。私が悪かった。疑って、ごめん。」強く、抱きしめた。

刹那は動きを止めて、私に体を預けていたが、ふいに顔を上げて、唇だけで言った。

きすして。



君を手放すなんて、絶対できない。