最悪だ…。 全身に降り注ぐ湯の量が少なく思えて蛇口を全開にした。 両手に水を受けて顔を洗う。特に口元を。 さっきから何度もこすってるのに、まだ汚れている気がする。唇だけじゃない。この体も、俺の存在自体も、汚れてる。 いやだ。…気持ち悪い。 グラハムも帰宅していたが、触れられる前にバスルームに逃げてきた。 先に全部洗い流したかった。そのまま俺に触ったら、彼まで汚れてしまいそうだったから。 なんなんだ、あの女は。 …きたない。 気持ち悪い。気持ち悪い。 その時、いきなり、バンッとバスルームのドアが開いた。 開けたのは 「…グラハム」 驚いている俺を彼が険しい顔で見た。 なんだ?怒ってる?どうして?何が有った? グラハムがゆっくりと口を開いた。 「…今日、女の子とキスしたらしいな」 「!?」 なんで?なぜ知っている?ただ驚いて目を見開く俺に彼が歩み寄る。 「…やはり、そうなのか」すごい目だ。怒ってる。 こんな顔見たことない。 …怖い。 「その娘のことが好きなのか」 「…なっ…違う!!」 「私とろくに話もせずにここにこもって…私に触れられるのが嫌になったか」 「違う!!そうじゃない」怒気を発散させる彼が俺の腕を痛い程つかんだ。 「冗談じゃない。別れてなどやるものか」 グラハムが俺を睨む。 恐怖で息を飲んだ。 「君は私のものだ。刹那」 降り注ぐシャワーの音が響いた。
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