「雪が好きなのか?刹那」旅館までのバスでも、熱心に外を見ていた。 「…好き、というより、珍しくて」 「珍しい?」 こくり、とうなずく。 「…俺の母国は南の方だから」 「そうなんだ」 また一つ、刹那のことが知れた。 「少し遊んで行こうか」 柔らかく微笑んで言うと、刹那の目が輝いた。 「…ほら、こうやって…」日系の友人に教えてもらったように、ポピュラーな雪遊びを見せる。 仕上げに小石で目を付けて。 「できた。雪だるま」 「…おぉ…」 擦り寄ってこちらの手元をのぞいていた刹那が、手の平サイズのそれを見て小さく歓声を上げた。 「やってごらん」 無心に雪を丸め始めた刹那。あぁ。可愛い。 今度は雪兎を… 「ひあああああっ!」 突然上がった刹那の叫び声に何事か!と振り向く。 彼は首もとを押さえて硬直している。 「つ、冷たい…」 木の枝から落ちた雪が首すじに入ったらしい。 …可愛い…。
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