「終わったか?」

「あぁ…」

クリスとの通信を切った後、席を外していたグラハムが刹那に問いかけた。

刹那はあまり自分の事を話したがらない。

付き合っていると言っても、刹那が普段誰と何をしているのか、グラハムは知らなかった。

尋ねた事がないわけではない。だが、言葉を濁した刹那を見て、もうよそうと思った。

言いたくなければ言わなければ良い。きっといつか話してくれるはずだと信じて。



だから先ほど微かにグラハムに聞こえた楽しそうなクリスの声は、ある意味で彼を安心させた。

あのロックオンだとか言う男もそうだが、刹那を気にかけてくれている人がいる。

自分と離れている間、刹那をちゃんと見てくれる事はありがたかった。彼はまだ16歳なのだ。



しかし一方で胸がちくりと痛んだ。本当は、もっと傍に居てやりたい。いや、もっと傍に居たい。

「どうした?」

「…今日はもう、私の傍から離れないでいてくれるね?」

「あぁ」

当たり前だろう、と。

さらりと返事をした刹那の言葉にそういう含みがあった気がして、グラハムは目の前の恋人を力いっぱい抱きしめた。

自然と背中に回された腕にも力が籠もる。

「…そういえば、」

腕の中で刹那が呟く。

「なんだ?」

「…今日はまだ、キスをしてないな」

あぁそういえばそうだった。

さっきは、衝動的に、キスもせずに。

腕を緩めて刹那と顔を突き合わせると、すぐに刹那が顔を近づけてくる。

久々の刹那からのキスにグラハムは目を閉じて、距離の埋まる僅かな時間を楽しんだ。