刹那と一緒に暮らすことになった。 彼の部屋に荷物を取りに行こう、と提案すると 「…たいした物は置いてないから別にいい。むしろ、こっちの方が多いくらいだ」 と返ってきた。 私の部屋に有る彼の持ち物は、ハブラシと着替えぐらい。…いったいこの子はどういう生活をしていたのか…。 私も彼も互いの知らないところがまだまだ有るようだ。 刹那はふらりと帰って来てふらりとどこかに行く。 多分、私がいない間にも帰っているはずだが、彼はほとんど痕跡を残さないから、よくわからない。 今日は仕事が早く終わったので、急いで家に帰る。 「ただいま…」 返事は、ない。 今日も刹那はいない。 一緒に住むようになって、辛いことは、家に帰る度に期待して、落胆することだ。 「…はぁ…」 暇だし、料理でもするか、と冷蔵庫をのぞいていると、玄関のドアが勢いよく開いた。 「お、お帰り…」 息を切らしながら言う、刹那がいた。 驚きと喜びで何も言えずに彼を見つめていると 「あの、下から電気が付いてるのが見えたから…」 あわてたように刹那が言った。 一緒に住むようになって、幸せなことは、落胆が歓喜に変わること。
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