死ねない理由



幸せだ。今この瞬間に死んでもいいくらいだ

刹那が私の告白を受け入れてくれた。あぁ…。

喜びのあまり、彼を抱きしめると、驚いて抵抗してきたがそのまま離さずにいると諦めた。

刹那を腕の中に閉じ込め、幸せを噛みしめていると

「…グラハム」

「ん?なんだい」

「…『恋人』って、何するんだ?」

…そうくるか。

「…ちなみに、今まで誰かと付き合ったことは?」

「無い」

「キスしたことは?」

「……………さっきのが」

初 めて!?

うわーうわーうわーうわーあまりの嬉しさに動揺が隠しきれなかった。

身を離した刹那がすねたように私を見る。

「…子供だと思っているんだろう」

「いや。可愛くて…」

頬を赤くして目をそらす刹那。

やばい。とろける…。

最初の質問に答えよう。

「…そうだね…。なるべく一緒にいたい。抱きしめたい。キスしたい。あとは…」

赤い顔で困ったように見上げてくる刹那に優しく微笑みながら

「刹那が欲しい。」

言った。

真っ赤になるのを期待していたが、意外にも刹那はいぶかしげな顔をした。

「…どうやるんだ?」

「え。」

こちらが真っ赤になった。

「…男と女なら、なんとなく分かる。けど、男同士は…」

本気で疑問に思っている。…なんなんだ!この、かわいらしさは!誘ってるのか!?いや!これは天然だ!彼にそんなつもりはない!落ち着け自分っ!!

私の内心の葛藤が全くわからない刹那は、小学生が教師に教えをこうような顔で見上げてくる。

「…どうやるんだ?」

ぐわぁっ!

これまでの人生で最も理性が必要な瞬間だった。部下に馬鹿にされた時もここまで自分を押さえ付けることが困難ではなかった。

待て!落ち着け!今襲い掛かったら刹那が怯えてしまう!!嫌われるかもしれないぞ!落ち着けぇっ!!

「…そ、のうち教えてあげるよ」



前言撤回

今死んだら死にきれない。