「…刹那?寝てるのか」 部屋に戻ると刹那はソファーのすみでちんまりと丸くなって寝ていた。 初めて見る。普段よりも幼い無防備な寝顔。長い睫毛が影を落としている。 かしたTシャツは刹那にはぶかぶかだった。 マグカップを彼の両手がしっかりつかんでいる。その指の細さが体にあっていない服で強調されていた。 指だけじゃない。首も、肩も、腰も、足も…。細い。襟元の首から肩にかけてのラインが綺麗だ。 腿を覆っていたシャツがめくれてなまめかしい。 「ん…」 刹那が気持ち良さそうに身じろぎした。 その存在の全てが …可愛い。可愛い。可愛すぎる。 まだ、会った回数も時間も少ない。けれど、彼の愛らしさに気付くには十分だった。 自覚したら、もう、駄目だった。彼ともっと近付きたかった。近付きたい。彼の特別になりたかった。なりたい。 それとなく聞き出すと、刹那は同性愛への偏見は無いらしい。 また、彼も私のことを憎からず思ってくれているようだった。嫌いな相手と何度も会う子じゃない。 けれど、彼の返事はノーだった。 答えた直後の刹那の顔が後悔していたように見えたのは、…きっと私の願望だろう。 気付けば一日中考えている。一緒に居るのが幸せで。動きの一つ一つに目が奪われ、小さな表情の変化に心が動く。 そんな相手が今、自分の家で、目の前で、安心しきって眠っている。 目眩がするほど幸せで、頭がくらくらする。 気が付いたら、吸い寄せられるように刹那に顔を近づけて、触れるだけのキスをしていた。 身を離すと、寝ぼけ眼でこちらを見上げていた。 それが、また、可愛くて。起こしてごめん、と言うはずだった口は違う言葉を紡いでいた。 「君が好きだ」 刹那の目が大きく見開かれる。 「君だけが好きだ」 刹那の顔がみるみるうちに赤くなる。 「君しか好きになれない」 刹那が動揺して視線を泳がせる。 「…私の恋人になってくれないか」 刹那は 小さくうなずいた。
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