「まぁ、死んだとの報告を受けておりましたのに」

王留美の容赦ない一言に思わず苦笑した。

市販の物であるが携帯端末を手に入れ、なんとか宇宙に上がる手筈を整えてもらえるよう連絡を取ったのだ。

「難しい状況ですけれど、なんとかなりますわ。すぐにお迎えに上がりますので、少々お待ちを」

簡単に場所を伝えて通信を切る。傷はまだ完全に治ってはいないが、とにかく今は一刻も早くトレミーへ戻りたかった。

生き残ったのなら、戦い続けるしかない。

これまでもこれからも、そのために自分は生きている。

(グラハム・エーカーに感謝しないとな)

彼にもらったこの先を無駄にするわけにはいかなかった。

ーたとえ、次に会ったときが敵同士だったとしても。


 





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目を覚ますと泣いていた。

もう数週間経つのにずっとこんな日々が続いている。

夢を見ていたのだと思う。だけど、どんな夢だったのかまるで思い出せない。

(…思い出さない方がいいのかもしれない)

きっと、彼が出てきたから。

ーしっかりしなくてはいけない。

あの一件以来、刹那もティエリアもすっかり沈んでしまっていた。

気持ちは皆一緒なんだから、とスメラギさんに言われても、2人とも自分に責任を感じているようだった。

あともう少し早かったら。

利き目が見えていれば。

…そう思った所で何か変わるわけではない。

もういい加減にしてくれと声を荒げた。

僕だって辛い。だけど、戦うべき時は戦わなきゃいけない。2人のしていることは、ただの現実逃避なのだと。

昨夜は、それからしばらくして謝りに来た2人を部屋に入れて、そのまま3人で並んで眠った。…こんなことは初めてだった。

「アレルヤ?」

隣に居る刹那に名前を呼ばれてはっとする。

いつのまに起きていたのか、彼は心配そうな顔でこちらを窺っていた。

「…泣いてるのか?」

「気にしないで」

「しかし…」

大丈夫だから、と言いかけたとき、通信機がうるさい音を立てた。

ティエリアも飛び起きる。

それはスメラギさんからで、その内容は想像もしないこと。

「王留美から連絡があったの。ロックオンがあちらに居るそうよ」

「え…」

ロックオンが?

生きて、いる?

「どういうことだ!」

眠気も一気に飛んだというふうにティエリアが映し出された映像に詰め寄った。

「私も詳しいことはわからないの。とにかく集まってもらえる?」

「了解した」

通信機を切った2人がばたばたと慌しく部屋を出て行く。

僕はぺたりと座り込んで俯いたまま、動けなかった。

「……ロックオンが……」

彼が、生きている。

ぼたぼたと零れる涙が握り締めた手の上に落ちて、指輪を濡らした。