頭を撫でられている感触で目を覚ました。

心地よい感触に思わずまた目を閉じてしまいそうになる。

心から愛された記憶のない僕は昔、この感覚を知らなくて。

母親が子供にしている情景をよく目にしたので、初めは子供扱いされているのかとこの感触があまり好きではなかったが、

いつだったかそれを伝えた時、彼は笑い飛ばして言った。

『これはお前を大切に思ってる証拠だ』



寝ぼけ眼でそんな事を思い出していると、いつも以上に優しい目をしたロックオンが口を開いた。

「おはよう、アレルヤ」

「おはようございます。…声が出てないですよ」

「そうみたいだな…身体も動かせそうにない」

昨日叫びすぎたかな、と彼は苦笑した。

そこまで無理をさせてしまったのは自分の所為なのだという罪悪感。

今更ながら、あの時どうして宇宙に居る選択をしたのだろうと悔やむ。

けれど考え事をしたかったというのは本当だ。

もしあの時ティエリアたちと地球に降りていれば、

久々の再会にお互いを離さなかったろうし(丁度昨日のように)一人で居る時間は極端に減った。

勿論二人で居れることは幸せだが、この考え事を先延ばしにしたくはなかった。

と、考えると結果的に良かったのかもしれない。自分が宇宙に居る間、彼は彼で一人の時間を過ごしていたようだし。



「無理して喋らないでください。ご飯の準備してきます」

「悪い。…ありがとな」

「…気にしないで。まだ休んでて良いですよ」

「アレルヤ、」

「喋らなくて良いですって。…なんですか?」

起こしかけた体を元に戻して目を覗き込むように問いかけると、微笑んだ彼の口が、声に出さずに言葉を紡いだ。



『愛してる』