夜中、一人で海岸まで出て、宇宙に通信をつないだ。 しばらくの呼び出しの後聞こえた「はい」という声に昂ぶっていた気持ちがすこし抑えられた気がした。 「よう、アレルヤ。そっちはどうだ?」 「さっきティエリアからレベル7の情報がトリニティに知られていたという報告があって…。 少し騒然としてたんですけど、僕は何もすることができないので部屋に戻ってきたところです」 「そうか」 「…今日は音声だけなんですね。顔が見たいな」 「今お前の顔見たら映像にキスしてしまいそうだ」 拒絶は冗談でごまかした。 向こうからくすっと笑い声が聞こえる。 今アレルヤの顔を見たら、泣いてしまうかもしれない。 正直それくらいまいっているのだ。 「何があったんですか?」 「え?」 「いや、なんとなく、変だなぁなんて。…話したくないことですか?」 「…今はな」 今日あったことを、今度会うときまでアレルヤに話すつもりはない。 それまでに彼が知ってしまったのならそれはその時。 もしかしたら、律儀なティエリアは報告していて、アレルヤはもう知っているのかもしれない。 けれど、だからこそ、自分の口からアレルヤが傍にいるときに伝えたかった。 自分よりも少し体温の高い彼にぴったり寄り添って、 腰に腕を回されたり、髪を梳いてもらったりしながら。 …そんな時間が自分に許されているのなら。 「…ロックオン」 「ん?」 「あなたがどこで何をしようと、僕はあなたの味方ですから。 安心して帰ってきてください。…僕のところに」 「…うん」 あぁやはり知ってしまったのかとも思う。 そう思うには十分すぎる言葉だった。 仲間を殺していたかもしれない。 それでも、お前は俺を受け入れてくれるのか? 刹那を撃つことにためらいはなかった。 ただ、自分の恨みが刹那の意思に負けただけだ。 まだ幼さの残る彼のその目の中に、戦うべくした決意を見た。 手にかけなかったのは、それを知ってしまったから。 ー銃弾に倒れた彼の亡骸を抱きながら涙を流すのは自分自身だ。 数え切れないほどの人を殺めて、今更家族の敵討ち1つ出来ないなんて我ながら笑ってしまう。 1人殺さなかった所で、自分が今までしたことは変わらない。 その報いはいつか受けなければならないのに。 …でも。 「…早く会いたい」 「僕もです」 今は傍にいたいと切に願う。
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